“望むのならば―――”

そう差し出された力に、躊躇いもなく縋った。今、目の前にある命を救えるならばと。
後悔は無かった。絶望も無かった。あったのは、人々を救うことができるという安堵と微かな期待。
思い出すのは、金色の髪をした鎧の少女。見下ろす、どこまでも澄んだ青い瞳。どれだけ時が過ぎようとも、どれだけの絶望を見ようとも決して忘れることのない、あの光景。
僅かな時を共に駆けた、あの誰よりも愛しい…。

“シロウ……あなたを―――”

別れは告げなかった。王であった少女は美しい朝焼けの空に消えた。それでも、信じていた。彼女はもう決して聖杯を受け取りはしないだろうと分かっていたけれど。
もう一度、会えると。
聖杯を受け取り守護者になる道を選んだ。
後悔は無かった。絶望もなかった。元よりこの身は正義の味方として、あらゆる人々を多く救う道をこそ求めていたのだから。
ただその道に、僅かな打算だけがあった。
過去も未来もなくなった英霊の座において、あらゆる可能性において、もう一度…。
あの美しき青と会遇するその時を―――。




月が、輝いていた。
幾たびの絶望に呼び出され、磨耗し、擦り切れた精神で。そして、暗く愚かな願いを抱いたこの身で、それを、見た。
色褪せることのない金糸と、白銀に輝く鎧。そして変わることのない澄んだ瞳が、きつく、捉えていた。
あの選択を後悔はしなかった。愛したからこそ、彼女と共に生きる道はなかった。それでも別れを受け入れたのは…。
たとえどのような形であれ、再び巡り会うことを…願った。



+++++++++++++++++++++++++++++++++++++
Fateルート後の士郎が最も弓に近いだろうなぁ、というのが一般説。私もそう思いますが。
弓になって磨耗してもセイバーのことだけは覚えていた弓だから、聖杯を受け取るときにちょろっとでもセイバーのことを考えたんではないかな、と。
Fateルートのセイバーは守護者にはなりませんが(…ならないよね?)、守護者には時間の概念がない。
なら過去のセイバーに会うことも…。それが例え敵同士だったとしても。とか。
全ての人を救いたいっていう望みの中に、ほんの少しでもそういう私欲が入っていたら萌えだなとか、そんな話でした。
無料のレンタルサーバー sutpin.com