小金言の短編を2つ。ほのぼの?




降水確率0%で本当に雨が降ることはないのだろうか。
「僕はそんなことはないと思うんですよね」
教会の玄関を掃き清めていたコトミネはその手を止めてこちらを見る。階段に座ってそれを眺めていた僕はにこりと微笑んだ。
「確率0なんてものは、この世の中にそうそう存在しないと思うんですよ」
「…そうかもしれないな」
だからどうしたと言うように掃き掃除を再開してしまうコトミネに、それでも僕は楽しげに笑う。
僕が何を話そうとしているのか彼はきっと分かっていないだろう。正直言って僕だって何を伝えたいのか分からない。ただふと、思ってしまったのだ。
「どんなことでも、絶対なんてものはないし確率0なんてこともないんですよ」
コトミネは訝しげにこちらを見るだけだった。



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「コトミネ、ちょっといいですか?」
自室で書類作業をしていた彼に呼びかければ険しい顔が上げられる。
「なんだ」
「いえ、ちょっと上にある物が取れなくて」
彼は書類をテーブルに置き、凝り固まった体をほぐすように伸びをした。
よほど長く書類作業をしていたのか、彼の目には疲れが見える。目に見えて疲れているなんて珍しいことだ。
「で、何を取るんだ?」
「お茶葉です。戸棚の上にあって取れないんですよ」
そう言うと彼は呆れたようにため息をついた。
「そんなもの、好きなように外に飲みに行けばいいだろう」
「いやですねぇ、僕だっていつもみたいにお金にものをいわせずに、ゆっくり家でお茶を飲みたくなることだってあるんですよ」
「ほう、美味いお茶が飲みたいからと言って専門店の本社ごと買い取った者の台詞とは思えんな」
「あの時はそういう気分だったんです」
「気分で買収されては企業も堪らんな」
喋っていればいつの間にか台所まで到着してしまい、コトミネが流しの上の戸棚を開く。
「どのお茶だ?」
「んーっと、じゃあおすすめを」
「残念ながらここは教会であって喫茶店ではない」
「知ってますよ。もう、ノリが悪いですねコトミネ」
そ んなちょっとした遣り取りが可笑しくてクスクスと肩を震わせれば、彼は付き合っていられないと適当な缶を選び僕に放り投げた。上からまるで爆弾のように 振ってきたそれを慌てて受け取り、非難を込めて見上げればそこにはもう彼の人は居ない。いつの間にやらさっさと出口へ向かい自室へと戻ってしまう。
その後姿を見送りながら僕はやれやれと肩を竦めた。
本当に、付き合いが悪いんだから。
やかんを火にかけながら、僕は棚からティーポットと二組のティーカップを取り出した。


「コトミネ、入りますよ」
コンコンと行儀良くノックをして三秒。中から返ってきた返事をきちんと聞いてから、僕はドアノブに手をかけた。
「今度はいったい何の用だ」
こちらを振り返りもせずに、彼は書類を見つめたままそう尋ねる。
その目の前にすっと温かな紅茶が入ったティーカップを差し出した。
「?」
「根詰めてると体を壊しますよ? ちょっと一服しませんか?」
にっこりと笑いかければもの凄く微妙な顔で見つめ返される。さすがにそこまで微妙そうな表情をされると、傷つくんですが…。と、ちょっと悲しく思いながらテーブルの上の書類をどけてティーカップを目の前に置いた。
「…勝手に片付けるな」
「いいじゃないですか。せっかく淹れたんですから、ちょっと一服するぐらい」
不機嫌な顔にそ知らぬふりをして、お盆に載せた僕の紅茶とお茶請けのクッキーを置く。ついでに、脇に置かれていた灰皿を引き寄せた。
「ずっと書類作業をしているんでしょう?目、疲れてるんじゃないですか?」
しばらく黙ってこちらを見ていたコトミネは、一度目を瞑り諦めるように溜息をついて手に持っていた書類をまとめ脇に置く。そうして、ポケットに入れていた煙草を取り出した。
「…煙草は嫌いだったのではなかったか?」
吸い込んだ煙を吐き出しながら意地悪く笑う彼に、少しだけ不機嫌な表情を作ってみせる。
「ええ、大嫌いですよ。吸う人の気が知れません」
だけど口元はすぐに笑みの形に戻ってしまう。それを少しだけ面白くなさげに眺めてから、彼の視線はすぐに違う方向へと向いてしまった。
自分で淹れた紅茶に口を付ける。これまで淹れた回数を考えれば、中々の出来栄えだ。
最近お気に入りの店で買ったクッキーを手に取りながらちらりと目の前の横顔を眺める。何もない空間をぼんやりと眺めながら煙草を燻らせる彼は、普段から考えれば格段に無防備で疲労の度合いが伺えた。
でもそのお陰で、ゆったりとしたティータイムが過ごせている。うららかな午後の日差しなんて入らない部屋だけれど、どことなく楽しく感じ口元をほころばせながらクッキーを齧った。



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思いつきの小ギル言2つでした。
私はこの2人だと小ギルの方がイニシアチブを取るらしい…。
何か言峰に勝たせられないんですよね(笑)
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