女体化カプなし。







「〜〜〜〜〜〜〜〜っやってられるか!!」
溜まりに溜まった鬱憤をぶつけるように床に箒を叩きつける。
それは昼に近い午前、陰気臭い石室の掃除をやっている最中だった。
俺の叫びと箒が床に叩きつけられた音が部屋に反響する。悠々とソファに座っていた女どもは、その音に目を瞬かせながらこちらに視線を向けた。
「…いきなり何だランサー」
「こんな事やってられるかっつってんだよっ!!」
やけに冷めた視線を向けるコトミネに俺は怒鳴りつける。そもそも、この女がマスターになってからというもの俺の聖杯戦争は狂いっぱなしだ。
真っ当な戦いを強制的に避けさせられ、諜報活動に従事させられるその不条理。…のみならず、この、住んでいる人員と明らかに合っていない無駄にだたっ広い教会の掃除。洗濯、炊事、花壇の水やり。果ては買出しまで。
ついこの間など「テレビで見ていたら食いたくなった」などという理由で、限定30個のケーキを買うために主婦やOL達の列へ並ばせたのである。マジふざけんな。
どこの世界に限定ケーキ買うために並ぶ英霊が居るというのだ!
「並んでいたではないか」
「そりゃお前の命令だったからだっ!!」
「ふん、言うほど美味い物でもなかったな。所詮は雑種の駄菓子ということか」
「ふ、そう言うなギルガメッシュ。それでは朝っぱらから主婦よりも早く並んでいたランサーが哀れだろう」
並ばせたのはお前だがな。
せせら笑うコトミネにあらん限りの憎しみを込めて睨みつける。だが、どこ吹く風というように欠片も気にしている様子はなかった。
「何が哀れだ。狗の使い道などその程度しかあるまい。むしろ使ってやっていることを光栄に思え」
「っな…!!ふざけんなツルペタ!何様だテメエ!」
「ツルペ…!!我は王だ!王様に決まっておろう。貴様こそ、狗のくせに生意気ぞ!」
「…王様も狗もどうでもいい。文句ならば昼食の時にでも聞いてやるから、今はさっさとここの掃除を済ませたらどうだランサー」
俺とギルガメッシュの言い合いに、やれやれと大仰に溜息をつく。なんだその自分は全くもって関係ないみたいな態度は。
そもそも、俺がここまで憤る原因は99%テメエにあるというのに。(残り1%はギルガメッシュ)
「だから、ふざけんなっつってんだろうが!俺は戦う為に呼び出された英霊だぞ!間違っても炊事やら掃除やらケーキやらを買うために呼び出されたわけじゃねえ!!大体、女が2人も居るのに料理の一つもできねえってのは情けねえとは思わねえのかよ!?」

「……………」

その文句に、なぜかコトミネは黙り込みギルガメッシュは見る見るうちに蒼褪めていく。
「……?」
「ふむ…」
その突然の変わりように首を傾げれば、コトミネが薄く、酷く加虐的な笑みを浮かべた。
「き…、綺礼…」
「それは今どき古臭いほどのジェンダー論だが、…まあいい。確かに掃除に洗濯、買出しまでやらせて更に炊事まで任せては憐れと云うものか。
良かろう。今日からは元通り私が台所に立つとしよう」
「…………ッ!!!!」
なんだかやたらと楽しげな笑みを浮かべるコトミネと、死刑宣告を受けた犯罪者のように固まるギルガメッシュ。俺はといえば、まさか要望が通るとも思っておらず信じきれずに目を瞬かせていた。
「へ…?マジで、アンタが飯を作るのかよ?」
「なんだ?要望したのはお前だろうに。まあ、確かにいい加減元の食事に戻したいと思っていたところだったしな」
「ああああぁああああああ……」
なぜか顔を覆って打ち拉がれるギルガメッシュ。待て、なんだ。何なんだその反応は。
コトミネは早速昼飯を作ろうというのか、立ち上がって台所に向う。その後姿は、鼻歌を歌いだしそうなほど機嫌が良い。
気味が、悪い。可笑しい。要望が通ったというのに、何故か俺の第六感が、むしろ戦士としての本能が告げている。
逃げろ。と。
「ききき綺礼!いきなりだが我は用を思い出した!!今から出かけるゆえ今日中には戻れないと思え!」
がばりと立ち上がり、コトミネの背に向って尊大に踏ん反り返りながら宣言するギルガメッシュ。だがその足が、生まれたての小鹿のようにブルブルと震えている。
「ふむ…、それは残念だ。だがまあ安心しろギルガメッシュ。これからは、毎日毎食私が作るので食べる機会はいくらでもある」
「ッッッッッ…!!!」
崩れた。がっくりと、倒れこむ瞬間その長い金髪が宙を舞う。しかも倒れこんだ後は肩が微かに震えている。
…………つーかマジ泣き!?
おいおい待て待て、何だよ!??これから一体何があるっつーんだよ!!
コトミネはこれ以上ないってぐらい良い笑顔を浮かべて廊下へ消える。マジ泣きしているギルガメッシュと2人部屋に残された俺には、もうどうしていいやら分からない。
「………オイ」
とりあえず話しかけてみる。だが、なんかやたらと可憐な啜り声が聞こえるだけだった。
「…ッ、ヒック…、ック、……イ〜〜〜ヌ〜〜〜〜〜、貴様、自分がどれほど恐ろしいことを言ったか分かっておるのかっ!!」
「いや…、何だよ。何なんだよさっきから。あの女が料理を作ると不味いのか?」
恐ろしく料理が下手とか。敢えて嫌いな食材ばかりを出してくるとか。
…後者は限りなくありそうだな。性格上。
「不味いだと…。アレがそのような生易しい問題か!!………いや、よい。せめて今だけは逃げなくては…!」
渾身の力を込めて立ち上がるギルガメッシュ。だがその腕が未だにガクガクと震えている。
「我は逃げる。貴様はこのまま自分がどれほど愚かだったかを思い知るがいい!!そして我が帰ってくるまでに死んどけ、マジで。呪われろ狗めッッ!!!」
なんだか色々と散々なことを喚き散らし、最後に捨て台詞のように叫んで走り去るギルガメッシュ。足が震えていたためか廊下でこけそうになっていた。
「……なんなんだよ一体」
呆然と呟きながら、暗い室内で途方にくれる。

この数分後、遠くに故郷の草原を良い感じに見ながら、遠のく意識で自分の発言を深く深く悔いた。



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小咄にするとあんまり女っぽさがでません。
どうすれば文章で女っぽさを感じさせることができるんでしょう…。
言葉遣いを変えると別人だしなぁ。……難しいです。
取り敢えず、呼び方だけちょっと変えてみる。
しかしランサーは「コトミネ」か「言峰」かどっちだったかな―…。
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